自歩人の生活 LIFE OF JIPPOJIN

小室淑恵さん(株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長)

企業が競争して、勝ちながら社員を大切にする環境を作りたい。

出産・育児、介護…さまざまな事情で
会社で休業を余儀なくされる人がいる。
彼らを社会に復帰させることを使命に感じ
ワークライフバランスを旗印に起業した小室さん。
彼女のヴィジョンにはこれからの日本の働き方
この国の未来のカタチがありました。

Page 1 2
小室淑恵さん

ひとつの講演が変えた人生

私はもともと、キャリアウーマンになることを考えていた訳ではありませんでした。ところが、大学3年生のときに、当時上智大学の教授だった猪口邦子さんの講演を聴き、考えが変わりました。その内容は、これからの時代は共働き家庭の数のほうが専業主婦家庭の数より多くなるということ。そして、企業は働きながら子育てをする女性のニーズにあった商品やサービスを開発する力が必要になること。だから、女性の存在が企業にとってますます重要な時代がやってくるということでした。そんな時代が来るなら私にもチャンスはあるかもしれないと思ったんです。とはいえ、就活準備もしていなかった私は、人生を変えようと一念発起し、アメリカに渡ったんです。ちょうど1年間、大学を休学し、アメリカではベビーシッターをして過ごしました。子育てしながら働くシングルマザーのお宅での住み込みのベビーシッターでしたが、なんとそのホストマザーは育児休業中にeラーニングで勉強して資格を取り、職場復帰後は役職も上がっていたんです。それには驚きましたし、日本社会でも、こうした育児休業中の過ごし方を実現できないかと考えました。ここでの経験が今の仕事に大きく役立つことになりました。

帰国後は、子育てをしている女性が多く、女性の発言権がある会社だということに魅力を感じ資生堂に入社しました。入社後は奈良支社を経て、本社経営企画室でIT戦略担当の仕事に就きました。そこで開発し、運営・販売に携わったのが育児休業者の職場復帰支援プログラムでした。これが現在我が社の主力商品である、armo(アルモ)の前身です。

小室淑恵さん

ワークライフバランスというもの

2005年に資生堂を退社後創業したのが、この株式会社ワーク・ライフバランスです。「ワークライフバランス」という言葉は2000年頃から日本でも知られるようになったのですが、欧米の企業に比べ日本の企業はまだまだ意識が高くありませんでした。資生堂時代、育児休業者職場復帰支援プログラムを販売し、企業へコンサルティングしながら感じたのは、育児休業した女性だけでなく、男性でも育児休業を取る人がいること、ほかにも介護休業、うつ病など、さまざまな休業者が増えていることでした。休業者が増えるということは企業活動にも大きな影響を与えます。そこで、企業活動の安定的継続と労働者の「ワークライフバランス」の重要性を改めて見つめ直し、株式会社ワーク・ライフバランスを創業し、男女関係なく、育児でも介護でもさまざまな事情があって休業した方を対象とした復帰支援プログラムarmo(アルモ)を開発したんです。

それでも、日本はまだまだ変えなければいけないルールが山積しています。例えば、日本の場合先進各国に比べ残業時間に対する割増率が低い。欧州各国は約1.5倍〜1.75倍となるところが日本は1.25倍です。割増率が低いと企業の側としては、新規雇用をするより今いる人を残業させた方が安上がりになる。これも若者の雇用が伸びない要因の一つであるし、残業の多い労働環境が変わらないんです。今、行政の審議会委員などを多くつとめさせていただいていますが、その中で国の意思決定のルールもわかってきました。だから、労働者にとってよりよいルールを作りながら、企業が世界で競争する中で勝ちつつ、社員を大切にする環境を作っていくことが出来ればと思っています。

Page 2

このページのトップへ